コロナは経理をどう変えるか①:転換期にある経理の働き方

Opinion

データのインテグレーションでリスク耐性を高めよう!

 多くの企業では、期末において、連結決算の情報を国内グループ会社や海外子会社から集めて合算するというオペレーションが行われている。データ登録用の連結パッケージの締切日までに、各地域の経理担当者がデータを登録するという「地域分散管理」となっているのだ。したがって、今回の新型コロナウイルス感染のように、その影響が全世界の活動拠点に拡大した場合、当然に各地域のデータ収集が遅延するリスクに直面する。

 日々の経営データをタイムリーに把握するということは、ビジネス・マネジメントの基本中の基本である。グローバルにビジネスを展開する際に情報収集が遅れるということは、リスクへの対応に致命的な遅れを生じさせる。このとき、各社が各拠点でたこつぼ的に多様な情報システムを利用しているということは、「連結データ≠単体データの合計」となってしまうことを意味し、全社的に統制の取れた活動を遂行することが困難になる。さらにデータのやり取りに人間のオペレーションが介在することで、事実とは異なる「意思」がデータに介在することにつながりうる。

 決算を年間行事として捉えている企業と、日々のマネジメントとして捉えている企業とでは、情報の活用レベルが全く異なることから、経営力に決定的な差が出るのは明らかである。つまり、グループ全社に対して統一されたシステムを用いて、リアルタイムで実績の集計を行うことが重要であり、そのためのインフラの構築が必要となる。

 日々、連結ベースでのデータを把握することで、災害等による決算遅延に対するリスク耐性を高めることが可能になるのだ。さらにIT(システム)資産を一元管理することで、保守、運用のコストを大幅に低減することができる。

 最近では、大規模企業でも、会計アプリケーションを自社で開発・保守・運用するのではなく、クラウドによるサービス(SaaS: System as a Service)を活用することが一般化している。また、原票のデータ保管(紙での保管義務廃止)などSaaS活用を前提とした法律の整備が加速している。リモートワークへの対応に加えて、業務アプリケーション切替えの柔軟性、データのインテグレーションの容易さの視点からも、システムのクラウド化を検討していく必要がある。

 これまで経理業務は、情報の発生源である製造、サービス、営業などの現場に物理的に近いところで行われることが一般的であったが、昨今は、ITを活用した自動化、セルフでのデータ登録とリモートでの管理が可能になっている。これからは、IT部門同様に経理部門も「サービス」として位置づけられ、ライン(現場)からの問い合わせは、メールや電話で対応するようになっていくのではないか。一方で、経理スタッフは、決算書等の基礎データをもとに、経営者に対してより高度な経営管理サービスを提供すべきであり、数字の集計作業自体は可能な限りアウトソースすることが機能高度化の観点からも望まれる。

 さらに、経理業務は、プロセスを一元化するという観点から、可能な限り各社・各拠点に分散させずに、社内業務センタもしくは社外BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などに集約するのが望ましい。業務が分散すると、管理レベルの低い会社や地域拠点では、データの集計ミス、不正、粉飾等の意図的な操作が発生する。業務を集約することで牽制機能とチェック業務の標準化が進むことになり、内部統制管理の面からもメリットがある。

 次回は、レジリエンスを高めるタイムリーな業績予測等の重要性について検討してみたい。(続く)

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