会議体としての株主総会のゆくえ:「株主総会運営に係るQ&A」の法解釈と将来の展望(緊急企画「コロナショックにどう対応するか」)

会社法務

 この記事は、企業会計2020年6月号(緊急企画「コロナショックにどう対応するか」)より執筆者の許可を得て転載したものです。

東京大学教授
田中 亘

 新型コロナウィルス感染症が拡大するなか、経済産業省と法務省は、4月2日、「株主総会運営に係るQ&A」(以下「本Q&A」という。)と題する文書を公表し、その中で、感染拡大防止に必要な対応として、株主総会の会場に入場できる株主の人数を制限することは可能であるとの見解を示した(4月14日更新)1。本稿は、本Q&A の見解を紹介した後、現下の状況を踏まえて、このような見解が現行法の解釈として認められるかを検討する。次に、将来的な課題として、株主総会を会議体として開催することを法が強制する必要があるかいう問題について、立法論を含めて検討を行う。

本Q&A の見解

  本Q&A は、株主総会の入場制限ないし出席制限の可否について、次のように述べる
(本Q&A・Q2への回答。下線は原文のまま)。

「新型コロナウィルスの感染拡大防止に必要な対応をとるために、やむを得ないと判断される場合には、合理的な範囲内において、自社会議室を活用するなど、例年より会場の規模を縮小することや、会場に入場できる株主の人数を制限することも、可能と考えます。現下の状況においては、その結果として、設定した会場に株主が出席していなくても、株主総会を開催することは可能と考えます。」

 なお、本Q&A は必ずしも明示しないが、上記の回答は、株主総会の招集の決定に際し、 株主総会に出席しない株主は書面投票または電子投票ができる旨を定めていること(会298①三、四)を前提にしていると解される2。以下の検討も、株主には少なくとも書面投票が認められていることを前提として行う。

検討:株主の総会出席権の制限の可否

正当な理由があれば株主の総会出席権の制限は可能であると解すべきこと

 現行の会社法では、株主総会の招集の決定に際しては、株主総会の「場所」を定めるべきものとされている(会298①一)。このことから、現行法上は、株主総会は、物理的に存在する一定の場所(会場)に株主が出席する形で開催される必要があり、物理的な会場を定めずにオンラインのみで株主総会を行うこと(バーチャルオンリー型株主総会)は許容されないと一般には解されていると見られる3。また、会社が株主を会場に入場させず、ひいては株主総会に出席させないことは、通常は、株主総会の招集手続または決議方法の瑕疵(会831①一)となり、総会決議の取消事由になりうると解される4

 もっとも、以上の解釈を前提にしても、株主の出席を制限する措置が一切許されないわけではないと解される。会社法315条2項も、議長が株主総会の秩序を乱す者を退場させることができる旨を規定している。この規定は、感染症の拡大という現下の状況に直接適用できるものとはいえないかもしれないが、株主の総会出席権も無制限に保障されるわけではなく、正当な理由があればこれを制限できるという解釈の手がかりとすることはできよう。

 新型コロナウィルスの感染拡大が深刻化している現状では、感染リスクを高める状況(密閉・密集・密接)を避けるため、株主の総会会場への入場を制限することには正当な理由を認めうる。もちろん、株主総会の開催を延期することも1つの対応策ではあるが、感染の終息時期を見通せないことや、特に基準日の変更が必要となる場合は、少なくとも短期的には混乱を生じさせる可能性もあることも考えれば、株主の入場を制限したうえで例年どおりの日程で株主総会を開催するという選択肢も許容されるべきであろう。書面投票が認められる限り、株主は総会に出席できなくても議決権の行使は保障されるし、株主総会参考書類によって議案に対する判断に必要な情報も得られるのであるから、感染による生命・身体への危険を生じさせてまで、株主の総会出席権を無制限に保障するべきであるとは思われない。

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会議体としての株主総会のゆくえ (402 ダウンロード)

※ 企業会計2020年6月号に掲載している以下の記事を特別公開しています。
⑴ 「業務スケジュールへの影響と後発事象・決算説明会への対応」
 「12月決算企業にみるリスク情報の開示」
⑶ 「会議体としての株主総会のゆくえ:「株主総会運営に係るQ&A」の法解釈と将来の展望」(本記事)
 新型コロナウイルス感染拡大で決算・開示対応にお困りの企業のみなさまに、ご活用いただければと思います。
※ 特別公開をご快諾いただいた筆者の方々に御礼申し上げます。

  1. 経済産業省=法務省「株主総会運営に係るQ&A」2020年4月2日付(4月14日更新)。
  2. 本Q&A は,Q1 に対する回答の中で,会社が株主に株主総会への出席を控えることを呼びかけるに際し,「書面投票や電子投票の方法を案内すること」が望ましいとしていることから,前提として,株主に書面投票または電子投票が認められていることが想定されていると解される。
  3. 第197回国会法務委員会第2号(2018年11月13日)における,小野瀬厚政・法務省民事局長(当時)の答弁参照(経済産業省2020年2月26日付「ハイブリッド型バーチャル株主総会の実施ガイド」4頁注2で引用),北村雅史「株主総会の電子化」『商事法務』2175号(2018)5頁,12頁。
  4. 最判昭和58・6・7民集37巻5号517頁(チッソ事件)。東京弁護士会会社法部編『新・株主総会ガイドライン(第2版)』(商事法務,2015年)48-49頁も参照。

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