テナントの賃料減額に応じた家主が受けられる支援措置は?

助成金

家主の家賃減額に対する支援措置はどれだけあるか(続)

テナント等に対する家賃支援措置

 飲食店等をはじめとした事業者は、各自治体の要請に基づき休業を行い、収入が途絶えることになった。それにもかかわらず、テナントに対する措置が手当てされていなかったことから、高額の家賃は支払い続けなければならないという窮状が大きく問題となった。最初に述べた国土交通省の家主に対する家賃減免要請も、このような窮状を背景としたものであった。しかし、この国土交通省の要請は、飲食店等のテナントに生じた損失を家主に付け回しているものにすぎず、何ら解決策とはいえないものであった。

 そこで、5月27日に政府が閣議決定した第2次補正予算案では、中小事業者等に対して、月家賃の3分の2相当額について6カ月分(最大600万円)の支給をする措置を行うものとしている(経済産業省資料参照)。

家主が留意すべきこと

 上記のように、テナントからの要請に基づいて家主が家賃の減額をすることについて、有効な家主支援策は存在していないのが現状である。したがって、家賃の減額に応じた場合は、家主がその分の損失をほとんど被ることに留意すべきである。

 上記の国土交通省の家主に対する家賃減額の要請時に、家主である法人が減額に応じた金額を寄附金ではなく一般の損金とすることができるということが、家主支援策のように述べられていた。しかし、これはすでに述べたように、家主はテナントの損失をやむを得ず引き受けたのであるから、損金の額になるのは当たり前のことであり、支援策などといえるものではない。

 さて、以上を踏まえて家主がとるべき措置や留意点をまとめると次のようなる。

互助が必要

 家主とテナントは、互いに利害が対立するような関係にあるともいえる。賃料の上げ下げが互いの収入・費用に直結しているからである。しかし、新型コロナウイルスという国難ともいえる苦境に直面し、これを乗り越えて行くには、国民がそれぞれ譲るべきは譲り、相互に助け合っていくことが必要である。一方的に自己の利益だけに固執していては、この困難な局面は乗り越えられない。

(注)一部に大手企業が家賃減免を求めるケースも見受けられるが、大手企業の立場の優位さを背景としたような要請には、疑問がある。

家賃減額に応じる場合

 家主が、テナントによる家賃の減額要請に応じる場合は、上記のように家主がその分の損失をすべて引き受けることになり、家主においてその損失が補てんされるような支援策はほぼないと認識したうえで対応するべきである。

 テナントの飲食店等に比べれば家主の方がまだゆとりがあるということは、一般的には考えられるところであるが、家主によっては、相当の借入金を抱えている場合も少なくない。家賃減額に応ずることによって、家主も倒れてしまうことも考えられるので、家主自らの資金繰りも十分に考慮して、減額要請には対応するべきである。

家賃猶予、保証金の取崩し

 家主からすると、減額に応ずることにより、テナントは当面は持ちこたえられるとしても、結果的にはテナントの損失を完全に引き受けることになってしまうので、長期的には痛手になることも考えられる。そこで、当面のテナントの資金的負担を軽減することを考慮して、家賃支払の一定期間の猶予、または預かり保証金の取崩しによる対応も検討すべきである。

第2次補正予算の家賃支援措置の活用

 遅きに失した感があるが、前述のとおり、政府は第2次補正予算で家賃支援措置を行うことにした。6月中旬までに国会成立を目指す。家主、テナントの双方は、この家賃支援措置を有効に活用して、両者が協力して、ともに生き残っていく方策を検討すべきである。

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