この記事は、「旬刊経理情報」2020年6月1日特大号(第2特集「政省令までフォロー 2020年度税制改正とコロナ禍対応税制の実務ガイド」)より第4章「納税・徴収の猶予、欠損金の繰戻し還付等 コロナ禍対応の税制措置の実務ポイント」のみを執筆者の許可を得て転載したものです。
PwC税理士法人 公認会計士・税理士
荒井優美子
特集の趣旨
今年度の税制改正ではオープンイノベーションや5G導入の促進税制、海外子会社の配当と株式譲渡を利用した租税回避対応、消費税の申告期限の延長など、企業に影響を及ぼすさまざまな改正が行われた。また、4月30日には、新型コロナウイルス感染症の緊急経済対策に伴い、税制措置の特例法が公布・施行されている。
そこで、本特集では、政省令が公布されていないグループ通算制度以外の年度改正および、新型コロナウイルス感染症の影響に対応するための税制措置について、その実務ポイントを解説していただいた。
納税・徴収の猶予、欠損金の繰戻し還付等 コロナ禍対応の税制措置の実務ポイント
この章のエッセンス
● 新型コロナの影響により2020年2月以降の事業収入が20%以上減少し、納税が困難である事業者等に対して納税猶予の特例が設けられ、2020年6月30日、または、納期限までの申請により、1年間の納税の猶予が認められる特例が設けられた。
● 資本金の額が10億円以下の法人についても、2020年2月1日から2022年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額について、繰戻還付の制度が認められる特例が設けられた。
● 中小企業経営強化税制の対象にテレワーク等のためのデジタル化設備が追加され、中小事業者等に適用される固定資産税の減免措置について、対象資産が拡充された。
はじめに
新型コロナウイルス感染症(以下、「新型コロナ」という)の拡大に伴う、「未曽有の経済危機を克服する対策のとりまとめ」1として、政府は2020年4月20日に「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策~国民の命と生活を守り抜き、経済再生へ~」(以下、「緊急経済対策」という)を閣議決定し(4月7日閣議決定、4月20日変更の閣議決定)、令和2年度補正予算案についても同日に概算の変更の閣議決定が行われた。
緊急経済対策の関連法(「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(以下、「特例法」という)および「地方税法等の一部を改正する法律」、以下、あわせて「特例法等」という)は、2020年4月30日に成立し(令和2年度補正予算も成立)、同日に公布・施行された。
特例法等における税制措置は、新型コロナの経済的影響を受ける個人や中小企業への支援を中心としたものだが、法令の解釈の明確化等の措置により、大企業も含めた納税者に対する新型コロナへの税務執行の対応が別途図られている。以下では、新型コロナに関連する特例法等による税制措置について解説を行う。
緊急経済対策と税制措置
緊急経済対策では、財政・金融・税制といったあらゆる政策手段を総動員することにより、思い切った規模の経済対策を、2つのフェーズ(第1は、感染症拡大の収束に目途がつくまでの間の「緊急支援フェーズ」、第2は、収束後の反転攻勢に向けた需要喚起と社会変革の推進、いわば「Ⅴ字回復フェーズ」)を意識し、5つの柱(①感染拡大防止策と医療提供体制の整備および治療薬の開発、②雇用の維持と事業の継続、③次の段階としての官民を挙げた経済活動の回復、④強靱な経済構造の構築、⑤今後への備え)に沿って施策を戦略的に実行するとしている。
緊急経済対策の経済効果は、総額で117・1兆円2程度の事業規模(財政支出は48・4兆円程度)と見込まれ、リーマンショック後の2009年4月経済危機対策(事業規模で56・8兆円、財政支出で15・4兆円)を超える過去最大の規模となっている。
緊急経済対策の緊急支援フェーズにおける「雇用の維持と事業の継続」は、感染症およびその蔓延防止のための措置の影響により厳しい状況に置かれている納税者に対し、緊急に必要な税制上の措置を講ずることを盛り込んでおり、時限的な特例措置として特例法等の立法化が図られたのである。
記事全文(第4章のみ)はこちらをご覧ください。
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