活用したい補助金・助成金制度
次に、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業に対する主な補助金・助成金の制度を紹介する。制度開始以降に、要件の緩和や支給額の増額がなされているものも多いため、定期的に最新の情報を確認することをおすすめしたい。
経済産業省 「IT導入補助金2020特別枠(C類型)」
新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるためにITツールの導入を行う場合に、「通常枠」より補助率の高い特別枠(C類型)を利用することができる。以下のスキーム図のように、「IT導入補助金事務局」・「IT導入支援事業者」・「中小企業・小規模事業者等」の3者で実施される。2020年5月からIT導入支援事業者(システムベンダー)の登録と補助事業者の申請受付が開始されている。
支給対象者 | 中小企業・小規模事業者等であり、交付申請の直近月において、申請者の事業場内最低賃金が法令上の地域別最低賃金以上であること |
対象事業 | 補助対象経費の1/6以上が以下のいずれかに対応したIT投資である事業 • サプライチェーンの毀損への対応 • 非対面型ビジネスモデルへの転換 • テレワーク環境の整備 |
対象経費 | あらかじめ事務局に登録されたITツール(事務局に登録されたIT導入支援事業者が提供するもの)の導入費用(*) * ソフトウェア、クラウド利用費、専門家経費、PC・ タブレット等のレンタル費用 * ハードウェアの購入費は対象外 * 公募前(2020年4月7日以降)に購入したITツール等についても対象 |
補助率 | 3/4(「非対面型ビジネスモデルへの転換」、「テレワーク環境の整備」) 2/3(「サプライチェーンの毀損への対応」のみの場合) |
補助金額 | 30万円~450万円 (賃上げ目標実行宣言がある場合は150万円~450万円) |
申請期間 | 2020年5月11日~2020年12月下旬(予定) 第2次締切6月12日、第3次締切6月26日、第4次締切7月10日 |
厚生労働省 「働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)」 【拡充】
2020年度第2次補正予算で予算が増額される予定である。
支給対象者 | 新型コロナウイルス感染症対策としてテレワークを新規に導入する中小企業事業主 |
対象事業 | • テレワーク用通信機器(*)の導入・運用 • 就業規則・労使協定等の作成・変更 • 労務管理担当者、労働者に対する研修等 • 外部専門家(社会保険労務士等)によるコンサルティング * シンクライアント以外のパソコン、タブレット、スマートフォンの購入費用は対象外 |
補助率 | 1/2 |
補助金額上限 | 1企業当たり100万円 |
交付申請期間(必要書類提出期間) | 募集の日から2020年7月31日まで |
厚生労働省 「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」
上記「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」の通常版であるが、2020年5月より、支給額上限の倍増等が行われている。
支給対象者 | 労災保険適用の中小企業・小規模事業者等であって、テレワークを新規に導入または継続して活用する者 |
対象事業 | 「新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース」と同様 |
成果目標 | • 評価期間に1回以上、対象労働者全員に、在宅またはサテライトオフィスにおいて就業するテレワークを実施させる • 評価期間において、対象労働者が在宅またはサテライトオフィスにおいてテレワークを実施した回数の週間平均を、1回以上とする |
補助率 | 成果目標達成:3/4 成果目標未達成:1/2 |
補助金額上限 | 成果目標達成:40万円/人、300万円/企業 成果目標未達成:20万円/人、200万円/企業 (「1人当たりの上限額」 × 対象労働者数または「1企業当たりの上限額」のいずれか低い方の額) |
交付申請期間(必要書類提出期間) | 2020年4月1日~12月1日まで(予定) |
厚生労働省 「雇用調整助成金(特例措置)」 【拡充】
第2次補正予算案において、日額上限の引上げや「緊急対応期間」の延長が盛り込まれている。
支給 対象者 | 雇用保険適用事業者であって、休業した月(その前月・前々月でも可)の売上または生産量が前年同月比(*)で5%以上減少した者 * 事業を開始して1年未満の場合等は、休業した月の1年前の同じ月から休業した月の前月までの間の任意の1カ月との比較が可能 |
助成額 | 平均賃金額 × 休業手当等の支払率 × 助成率(2/3~10/10) |
受給 限度額 | 1人1日当たり8,330円(拡充後15,000円) |
緊急対応期間 | 2020年4月1日~6月30日(拡充後2020年9月30日) |
経済産業省 「家賃支援給付金」 【新設】
店舗の家賃負担を軽減する「家賃支援給付金」が第2次補正予算案に盛り込まれている。
支給対象者 | テナント事業者のうち、中堅企業、中⼩企業等であって、2020年5⽉〜12⽉において以下のいずれかに該当する者 • いずれか1カ⽉の売上⾼が前年同⽉⽐で50%以上減少 • 連続する3カ⽉の売上⾼が前年同期⽐で30%以上減少 |
給付額 | 申請時の直近の⽀払家賃(⽉額)× 2/3(*) × 6カ月 * 複数店舗を所有する場合等は、給付上限超過額の1/3を追加給付 |
受給限度額 | (月額)法人50万円、個人事業者25万円 * 複数店舗を所有する場合等は、法人100万円、個人事業者50万円 |
申請期間 | 未定(6月下旬受付開始を目指す) |
経済産業省 「持続化給付金」
売上高減少の要件があるものの、事業全般に広く使えるのが特徴である。
支給対象者 | 資本金10億円未満であり、2020年1月以降の任意の月(対象月)の売上が前年同月(*)比で50%以上減少した事業者 * 2019年に設立の企業は、設立月~2019年12月までの平均との比較も可 |
計算方法 | 前年の総売上 ー (前年同月比▲50%の月(対象月)の売上 × 12) |
受給限度額 | 法人200万円、個人事業者100万円 |
補助金・助成金を検討する場合の留意事項
補助金・助成金には、通常、支給要件や応募枠が設定されているため、必ずしも申請どおりに受給できるとは限らず、仮に受給できたとしても、支給者側の事務の遅延等で実際に入金されるタイミングが遅くなることも想定しなければならない。また、交付時に定められた目的以外の支出を行った場合には、返還が求められる可能性があることに留意する必要がある。
出資による支援
第2次補正予算案において、官民ファンドや政府系機関の投資枠やファンドの拡充が予定されている(経済産業省「令和2年度第2次補正予算案等における金融支援策」)。
- 産業⾰新投資機構の投融資枠拡充(政府保証借入枠を1.5兆円拡充)
- ⽇本政策投資銀⾏による特定投資業務の投融資枠拡充(1,000億円の出資)
- 地域経済活性化⽀援機構による⽀援の強化(政府保証借入枠を1兆円拡充)
- 中⼩企業基盤整備機構が出資するファンドによる出資等の強化(600億円を予算措置)
わが国のスタートアップ企業に対するリスクマネーの供給は、主にベンチャーキャピタルが担っているが、昨今ミドルステージやレイターステージにおいて存在感を増していた事業会社やコーポレート・ベンチャーキャピタルからの投資の一時的な減少が懸念される中、産業⾰新投資機構や地域経済活性化⽀援機構等の官民ファンドを活用し、政策的にリスクマネー供給を維持しようとすることは好ましい動きである。今後どのような形でスタートアップ企業への出資が実行されていくのかが注目される。
おわりに
対コロナ、ポストコロナ社会において、イノベーションを生み出すスタートアップ企業への期待は大きい。また、こうした混乱の中でもベンチャーエコシステムを維持・発展させていかなければ、わが国産業の発展を阻害することとなる。政府や関係機関には、今後も長期的な視点による継続的な支援を期待したい。
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