今のうちに確認しておきたい コロナ禍対応税制のチェックポイント(旬刊経理情報2020/7/10日増大号)

税務

KPMG税理士法人 税理士
河崎 元孝
KPMG税理士法人
和久井 敏男

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い売上の減少等の影響を受けている事業者については、国からの持続化給付金や、地方自治体からの感染拡大防止協力金等の措置が講じられている。税制においても、新たに成立した「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(以下、「新型コロナ税特法」という)および同政省令に基づいて、いくつかの特例措置がなされた。

 本稿では、これら税制上の措置のうち主に企業においてチェックしておくべきと思われる事項について説明する。

この記事のエッセンス

●法人税については、青色欠損金の繰戻し還付の適用対象者について資本金の額等が10億円以下の一定の法人に拡大された。また、テレワーク等の設備投資が優遇税制の対象となった。
●消費税については、新型コロナの影響により売上が減少した場合、一定要件のもとにその事業年度から課税事業者を選択(または選択をやめる)できるようになったこと、納税義務の免除が制限されている者も、一定要件のもとに免税事業者になれるようになったことを確認しておきたい。
●また、新型コロナの影響によって売上が減少しており、納税を行うことが困難である場合には、一定要件のもとに1年間の納税の猶予を受けることができるようになった。

法人税に関するチェック項目

青色欠損金の繰戻し還付の適用対象者の拡大およびテレワーク等のための設備投資を特別償却または税額控除の対象とする措置がなされた。

青色欠損金の繰戻しによる還付制度の特例

ポイント

・資本金の額等が1億円超10億円以下の法人も繰戻し還付の適用が可能とされた。
・ただし、資本金の額等が10億円超である法人の完全子会社等一定の法人には、本特例の適用はないため留意が必要である。
参照条文:新型コロナ税特法7、同施行令5、新型コロナ税特法附則4

ポイント解説

 青色欠損金の繰戻し還付制度は、中小企業者等の各事業年度において生じた欠損金額(解散等の事実が生じた場合の欠損金額等を含む)を除き、2022年3月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額についてはその適用が停止されている。すなわち、資本金の額等が1億円超の法人等についてはその適用がなかった(図表1)。

 本特例により、2020年2月1日から2022年1月31日までの間に終了する各事業年度において生じた欠損金額に係る繰戻し還付を適用できない法人は、各事業年度終了の時において図表2に掲げる法人とされた。すなわち、資本金の額等が1億円超であっても10億円以下である法人については、資本金の額等が10億円超の法人の100%子会社に該当する等一定の場合を除き、繰戻し還付の適用が可能になった。

 なお、繰戻し還付に係る還付請求書の提出期限は、原則として、繰戻し還付の適用を受けようとする事業年度の確定申告書の提出時であるが、当該申告書を2020年7月1日前に提出した法人(図表1の①〜③を除く)については、経過措置により2020年7月31日までとされている。

(図表1)中小企業者等

① 普通法人(*1)のうち、事業年度終了時の資本金の額等が1億円以下であるものまたは資本等を有しないもので、その事業年度終了の時において次に掲げる法人に該当するものを除く
 ・相互会社、外国相互会社
 ・大法人(*2)による完全支配関係があるもの
 ・完全支配関係がある複数の大法人(*2)に発行済株式等の全部を保有されているもの
② 公益法人等または協同組合等
③ 公益法人等とみなされる法人(NPO法人等)
④ 人格のない社団等

(*1)  投資法人および特定目的会社を除く
(*2)  資本金の額・出資金の額が5億円以上の法人、相互会社・外国相互会社または受託法人

(図表2)適用除外法人

① 大規模法人(*)
② 大規模法人(*)との間にその大規模法人による完全支配関係がある普通法人
③ 完全支配関係がある複数の大規模法人(*)に発行済株式等の全部を保有されている法人
④ 投資法人
⑤ 特定目的会社

(*) 資本金の額等が10億円超の法人および相互会社・外国相互会社


記事全文はこちらをご覧ください(旬刊経理情報2020年7月10日増大号(No.1583)実務解説より)。

コメント

タイトルとURLをコピーしました