タイ国「通信を利用した会議に関する緊急勅令」の概要

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 この記事はデロイト トーマツ グループ タイ日系企業サービスグループが発行しているニュースレター「日系企業向けニュースレター」より、同グループの許可を得て転載しています。

タイ国、通信を利用した会議に関する緊急勅令を公表

 2020年4月19日、「通信を利用した会議に関する緊急勅令 仏暦2563年(西暦2020年)」(以下、「緊急勅令」という)が(タイ国の)官報に掲載された。本緊急勅令の狙いは、新型コロナウイルス(Covid-19)の感染拡大防止を目的とした世界保健機関(WHO)の推奨に従い、ソーシャル・ディスタンスを保つことにある。

 本緊急勅令の公布に伴い、WHOが推奨するソーシャル・ディスタンスを保つために、制約があって現実的ではなかった(通信を利用した会議に関する)従前の規定である2014年6月27日付の「国家平和秩序評議会布告No.74/2557」(以下、「NCPO布告」という)は廃止された。

 なお、2014年11月24日付で情報通信技術省が公表していた「通信技術を利用した会議の安全基準の布告」(以下、「ICT布告」という)は、本緊急勅令と矛盾しない範囲において依然として効力を有する。

緊急勅令の主な留意点

 本緊急勅令は、2020年4月19日以後に開催される通信を利用した会議に効力を有することとなる。

 通信を利用した会議を開催する場合、会議出席者は同一の場所に集う必要はなく、通信を利用した議論、相談、意見表明を行うことが認められる。しかしながら、本緊急勅令の規定により、人民代表院、元老院、国民議会、判決や裁判所命令に関する会議、その他関連省令で定められた会議などは通信を利用して開催することは認められない。

 通信を利用した会議は、デジタル経済社会省が官報に公布予定(2020年4月19日現在)の「通信を利用した会議に関する安全基準」に準拠することが求められる。

 会議招集通知および会議書類は電子メールで送信されることが認められ、会議出席者は当該会議招集通知および会議書類の写しを証憑として保管しなければならない。しかし、証憑は電子データにより保存することができる。

 通信を利用した会議の開催にあたり、議長は当該会議が以下に掲げる事項を充足するように手配することが求められる。

  1. 会議開催前に、通信を利用して会議出席者の本人確認をする
  2. 会議出席者が、通常投票と匿名投票のいずれの方法による決議にも対応できるようにする
  3. 会議議事録を書面に残す
  4. 機密性の高い会議を除き、会議開催中にわたって会議出席者全員の音声または映像を含む音声を電子データにより記録する
  5. 会議出席者全員の通信データ(ログデータ)を証憑として保存する
  6. 上記1.および5.のデータを会議議事録の一部として取り扱う

 会議出席者に出席に伴う手当等の報酬が支払われる場合、これらの手当等は通信を利用した会議における実際の出席者に支払われなければならない。

 本緊急勅令に基づいて開催される通信を利用した会議は法的効力を持つ会議とみなされ、本緊急勅令に基づく電子データの法的有効性は、民事訴訟、刑事訴訟、その他の訴訟において、電子データであることのみを理由に証拠能力を否認されるものではない。

 電子取引開発機構(ETDA)は、通信を利用した会議システムのサービス・プロバイダーに対しNCPO布告とICT布告に関する法令遵守の状況を評価することを要請しており、彼らが実施する自己評価レポートの内容を公表した。ETDAは、サービス・プロバイダーによる上記2つの法令遵守の是非を調査・認証していないため、使用者はサービス・プロバイダーの安全対策を自ら検討しなければならない。

 通信を利用した会議システムおよび各サービス・プロバイダーの自己評価シートの詳細な情報は、ETDAから公表されたウェブサイトを参照されたい。

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