国税庁新型コロナFAQ・5月15日更新内容のポイント

税務

税理士 藤曲武美

 新型コロナ対策関係の税務上の取扱いに関する「FAQ」1が5月15日付で更新された。更新された項目とその概要についてまとめてみた。なお、問の番号は、「FAQ」における問番号である。

教育資金の一括贈与の非課税特例における領収書等の提出期限の延長について(1.問4-3)

 父母や祖父母からの教育資金の一括贈与については所定の手続を前提に非課税とされている。この非課税の適用を受ける場合には、教育資金を実際に使った際に、教育資金の管理をしている信託銀行等の金融機関に対して、支払年月日から1年経過日または支払年月日の属する年の翌年3月15日までに「領収書等」を提出することとされている(租税特別措置法70条の2の2第7項)。

 新型コロナウイルスの影響で領収書等を上記期限までに提出できないときは、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を税務署に提出し、かつ提出先の金融機関に期限延長の了解をとる必要がある。

プロスポーツのスポンサー企業が行う復旧支援(5.問5-2)

 Jリーグなどのプロスポーツ団体と広告宣伝契約を取り交わしているスポンサー企業は、新型コロナウイルスの影響で広告宣伝価値が大幅に減少した場合には、契約上は、スポンサー料の返還を要求することが可能であることが多いであろう。しかし、スポンサー企業としては、契約先のプロスポーツ団体の試合中止等に伴う経営難を考慮し、復旧支援のためにスポンサー料の返還を辞退することも考えられる。このような返還の辞退による損失の額について、法人税上の取扱いがどうなるかが問題になる。

 このような場合には、スポンサー料の返還の辞退が、新型コロナウイルスの影響により経営難となったプロスポーツ団体の復旧支援のため、相当の期間内に行うもので、復旧支援が目的であることが書面等で確認できる場合は、その辞退による損失の額は、寄附金や交際費等以外の費用として損金の額に算入される。

 この場合の相当の期間内とは、例えば、試合の再開や観客の入場制限などが解消した後で観客動員数がコロナ禍の前の状態に戻るまでの期間などと考えられる。

学生に対して大学等から助成金等が支給された場合の取扱い(5.問9-2)

 大学生が、大学から新型コロナウイルスの影響による学生支援策として、助成金などを受けた場合の税金上の取扱いがどのようになるかが問題になる。

 これについては、助成金などの内容・性格により、取扱いが異なる。

学費を賄うために支給された支援金

 学費を賄うための支援金であることから、所得税法9条1項15号の非課税となる「学資金」に該当すると考えられる。したがって、所得税は非課税となる。

 なお、使途が上記のように特に限定されていない場合は、次の【生活費を賄うために支給された支援金】の取扱いになる。

生活費を賄うために支給された支援金

 生活全般を賄うためなど、特に使途が特定されていない場合は、法人からの贈与に該当し、一時所得の収入金額になる。一時所得の場合は、50万円の特別控除額があることから、他の一時所得の収入金額と合わせて50万円を超えなければ、結果的には課税されないことになる。

感染症に感染した学生に対する見舞金

 社会通念上相当の見舞金額程度2であれば、「心身又は資産に加えられた損害につき支払を受ける相当の見舞金」(所得税法9条1項17号、所得税法施行令30条3号)に該当するため非課税となる。

遠隔授業を受けるために供与されるパソコン等

 非課税となる学資金に該当すると考えられるので、所得税の課税対象にならない。

従業員に対して支給する見舞金(5.問9-3)

 介護老人福祉施設など緊急事態宣言下でも継続が求められている事業を行っている場合には、その事業継続に伴い、その介護施設などの従業員は、新型コロナウイルス感染症への感染リスクを抱えながら従事することになる。

 そこで、事業者が、慶弔規程等を改定し、例えば「新型コロナウイルスに対する緊急事態宣言下において介護サービスを実施する従業員に対しては、5万円の見舞金を支給する」こととし、この規程に基づいて該当する従業員に支給した場合には、給与課税の対象にならないかが問題になる。

 これについては、新型コロナウイルス感染症に関連して従業員等が事業者から支給を受ける見舞金が、次の3つの条件を満たす場合には、非課税所得に該当する(所得税法9条1項17号)。

  • その見舞金が心身または資産に加えられた損害につき支払を受けるものであること【条件①】
  • その見舞金の支給額が社会通念上相当であること【条件②】
  • その見舞金が役務の対価たる性質を有していないこと【条件③】

 なお、緊急事態宣言が解除されてから相当期間を経過して支給の決定がされたものについては、そもそも「見舞金」とはいえない場合があるので、留意する必要がある。

条件①~③について、より詳しい内容は以下のとおりである(「新型コロナウイルス感染症に関連して使用人等が使用者から支給を受ける見舞金の所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」(国税庁、2020年5月15日)も参照)。

【条件①・心身または資産に加えられた損害につき支払を受けるもの】

 緊急事態宣言下で事業の継続を求められる事業者の従業員等で次の1.および2.に該当する者が支払を受けるものであること。

  1. 多数の者との接触を余儀なくされる業務など新型コロナウイルス感染症に感染する可能性が高い業務に従事している者
  2. 緊急事態宣言がされる前と比較して、相当程度心身に負担がかかっていると認められる者

【条件②・社会通念上相当の見舞金】

 「社会通念上相当」であるかどうかについては、次に掲げる事項を勘案して判断する。

  1. その見舞金の支給額が、従業員等ごとに新型コロナウイルス感染症に感染する可能性の程度や感染の事実に応じた金額となっており、そのことが慶弔規程等において明らかになっていること
  2. その見舞金の支給額が、慶弔規程等や過去の取扱いに照らして相当と認められるものであること

【条件③・役務の対価たる性質を有していないこと】

 次のような見舞金は該当しないことになる。

  1. 本来受けるべき給与等の額を減額した上で、それに相当する額を支給するもの
  2. 感染の可能性の程度等にかかわらず従業員等に一律に支給するもの
  3. 感染の可能性の程度等が同じと認められる従業員等のうち特定の者にのみ支給するもの
  4. 支給額が通常の給与等の額の多寡に応じて決定されるもの

売上の一部を医療機関等に寄附した場合の金額の取扱い(5.問10)

 食料品を販売する個人事業者が、売上の一部を医療機関に寄附した場合に、この寄附金は事業所得の金額の計算上、必要経費になるかどうかが問題になる。

 FAQの例では、「①指定商品の売上金額の一定割合を寄附金額とすること、②寄附先、③寄附日などをあらかじめ設定し、指定商品を購入するお客様にご理解いただけるよう店内ポスターやホームページなどで広く一般に周知するとともに、寄附をした後には、その旨も同様に周知することとして」いる場合を想定している。

 商品の販売時に、所定の日に売上金額の一定割合の金額を指定された医療機関に寄附することを店内ポスターなどで広く一般に周知していたということで、こうした寄附は、新型コロナウイルス禍の下で社会的に必要とされる医療機関への支援を目的としているほか、集客を目的として広告宣伝的な効果も認められる。また、事前に十分に周知されていれば、事業者は医療機関に寄附する義務が生じているともいえる。

 したがって、このような寄附は、事業所得の計算上、必要経費となる。ただし、次のような場合には、必要経費に算入できないことになると考えられる。

  • 「売上金額の一部を寄附」としか書いていないように、寄附金額が不明確である場合
  • 「医療機関に寄付します。」というように、寄附先が不明確な場合
  • 事前の周知内容と異なる内容の寄附を行っているなど、事業遂行上の必要性が不明確な場合
  1. 「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」
  2. FAQの例では5万円。

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