第1四半期決算の直前対策②コロナ禍の影響を踏まえた開示ポイント

会計・監査

PwCあらた有限責任監査法人
公認会計士 市原順二
公認会計士 柳 一基

 この記事は、「旬刊経理情報」2020年6月20日号特集「コロナ禍の影響と改正事項を総点検 2020年6月第1四半期決算の直前対策」)より第2章「先行する開示例も参考に コロナ禍の影響を踏まえた開示ポイント」を執筆者の許可を得て転載したものです。

【この章のエッセンス】
●有価証券報告書、四半期報告書の提出タイミングによって、財務書類の後発事象期間が重複することから開示の整合性等を考慮すべきである。
●重要な会計上の見積りを行った際には、どのような仮定を置いて会計上の見積りを行ったかについて財務諸表の利用者が理解できるよう追加情報の注記を行うことの是非を検討する必要がある。
●「事業等のリスク」、「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」においても情報開示を考慮すべき事項がある。

はじめに

 2020年初めより中国湖北省で発生が確認された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中に猛威を振るい、企業の経済活動にも多大な影響を与えているばかりでなく、企業の決算業務や外部監査人の監査作業にも影響を与えているところである。この新型コロナウイルス感染症の流行問題が当面継続した場合における2020年6月第1四半期決算において開示実務に関して、開示例を紹介しながら、留意すべき点を検討する。

 なお本稿における意見にわたる部分は筆者の私見であり所属する監査法人の見解ではないことをあらかじめお断りしておく。

四半期報告書等の提出期限の延期

提出期限の延期の概要

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止の観点から、2020年4月17日、「企業内容等の開示に関する内閣府令」(以下「改正内閣府令」という)が公布されている。改正内閣府令では、2020年4月20日から9月29日までに提出期限を迎える有価証券報告書、四半期報告書等の報告書について、一律に2020年9月30日まで提出期限を延長することとされている。

 これは、新型コロナウイルス感染症に関する緊急事態宣言を受け、外出の抑制、リモートワークの推奨等により企業の決算業務および監査・レビュー業務に支障をきたし、期限内に提出することができないやむを得ない理由が広く存在することを踏まえての措置であると考えられる。通常の場合における提出期限の延期にあたっては個別に所管の財務局等に申請を行うことが求められるが、今回はそのような申請手続も不要とされている。

2020年6月第1四半期の四半期報告書の提出期限

 2020年6月第1四半期決算に係る四半期報告書の提出実務に当てはめると、従来決算日より45日を経過した8月15日が提出期限であったが、改正内閣府令の適用により9月30日まで提出期限が延長されることとなる。もっとも、2020年6月末に第1四半期決算を迎える企業は、四半期報告書の提出に先立ち2020年3月期の有価証券報告書の提出を行う必要があり、この提出期限も6月30日から9月30日に期限延長がされることになる。

 その点を踏まえると、2020年3月期の有価証券報告書の提出のタイミングを検討する際にあわせて、2020年6月第1四半期の四半期報告書の提出タイミングも検討しておくことが望ましい。有価証券報告書の提出を従来より遅らせて7月以降とする場合、6月末日を貸借対照表日とする第1四半期決算の実務、レビュー実務に少なからず影響を与えることになり、通常年度でのスケジュールどおりに決算実務が進められない可能性がある。

 さらには両報告書に挿入される財務書類の後発事象期間が重複することから両報告書の開示の整合性等を考慮する必要が生じる。後発事象の取扱いについては後述する。


 記事全文(第2章のみ)はこちらをご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました