テナントの賃料減額に応じた家主が受けられる支援措置は?

助成金

税理士 藤曲武美

 4月に出された国土交通省の事務連絡を契機として、テナントから家主に対して、家賃の減額要請が数多く行われている。家主としても、テナントの窮状を考慮すれば、心情的にはできる限り支援し、今後とも良好な賃貸借関係を維持していきたいと考えるのが自然である。

 しかし、テナントからの家賃の減額要請に応じた家主側には、どのような手当てが用意されているのであろうか。テナントや借家人の減額要請に応えたのはよいが、その減額分を家主側ですべて被るというのでは、家賃収入全体に占める割合にもよるが、家主にとっても重大な影響が生ずることも考えられなくはない。

 そこで、家賃減額に応じた家主に対する支援措置にはどのようなものがあるかを検討する。

家主の家賃減額に対する支援措置はどれだけあるか

 まず、家賃減額に応じた家主に対する特別の措置は手当てされておらず、一般的な新型コロナウイルス対策の適用を検討することになる。家主において適用可能な措置をあげると次のようなものがある。

国税・地方税の納税猶予措置

 2020年2月以降納期限までの間の任意の1カ月において、前年対比で月20%以上の売上減少が生じており、かつ納税が困難(向こう半年間の事業資金は考慮して柔軟に対応される)である場合には、1年間の納税猶予が認められる。

 通常の納税猶予については延滞税が課されるが、新型コロナウイルス感染症対策に関する特例措置については延滞税が課されない。また、担保も不要である。

 この措置は、2020年2月1日以後2021年1月31日までに納期限が到来するものについて適用がある。これは、税金が減額されるものではなく、その支払が最長1年間猶予されるという措置である。

持続化給付金の受給

 2020年1月~12月の間の任意の1カ月において前年対比で売上が50%以上減少した個人事業者または法人については、持続化給付金(個人事業者・100万円、法人・200万円を上限)を受けることができる。

 しかし、ここで注意すべきことは、個人の土地、建物の貸付による、いわゆる不動産所得には、この持続化給付金の適用はないということである。持続化給付金は、事業の継続を支援するためのもので、個人事業者の場合は事業所得だけが対象とされており、土地・建物の賃貸による収入は、大規模に行っていたとしても事業所得ではなく、不動産所得であるため適用がない(経済産業省「持続化給付金に関するよくあるお問合せ・Q8」)。

 一方、法人が行う不動産賃貸業は、法人の事業として行われていることから、持続化給付金の適用がある。この両者の取扱いの相違に合理性があるとは思われないが、そのような取扱いになっていることに留意しなければならない。

(注)第2次補正予算案で「持続化給付金の対応強化」が盛り込まれている。フリーランスを念頭に雑所得、給与所得も対象にするなどのことのようだが、不動産所得も対象とするということは明らかにされていない。今後の国会論議などに注意されたい。

固定資産税の特例措置

 2020年2月~10月までの任意の3カ月の売上高が、前年同期間対比で次の要件を満たすものは償却資産・事業用家屋(土地は除外)に係る固定資産税・都市計画税が次のとおりに減免される。

① 30%以上50%未満減少2分の1
② 50%以上全額

 この特例措置の適用を受けるためには、2021年1月末日までに認定経営革新等支援機関等の確認を受けて各市町村に申告する必要がある。

 この措置については、特に次の点に注意しなければならない。

  1. 減免の対象となる固定資産税は、令和3(2021)年度課税分の固定資産税・都市計画税に限定されている。したがって、実際の効果が出るのは、2021年の4月以降に支払う固定資産税等についてである。
  2. この措置は、償却資産・事業用家屋に限定されている。すなわち、賃貸建物の敷地である土地に係る固定資産税については減免されない。特に都心等にある物件の固定資産税の多くは土地に対するものであって、土地に対する固定資産税等が多額であることを考慮すると、その措置の効果はかなり減少してしまうといえる。

次ページでは、閣議決定された第2次補正予算案に盛り込まれたテナントに対する家賃支援措置も紹介します。

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