コロナ禍で備えたい『事業再生』の検討事項

会計・監査

 この記事は、「旬刊経理情報」2020年6月1日特大号第1特集「政府支援策の活用後のステージとは コロナ禍で備えたい『事業再生』の検討事項」)より第1章「資金をめぐる政府支援策の活用とその後の対応策」のみを執筆者の許可を得て転載したものです。

デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
公認会計士 伊藤雅之

特集の趣旨

 新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響による大幅な消費需要の低迷などで、多くの企業は、利益やキャッシュ・フローが減少し、資金繰り等に不安を感じていることと思われる。そこで、本特集ではまず、資金をめぐる政府支援策を整理しつつ、今後の対応策を検討する際のポイントを解説していただいた。そのうえで、自社もしくは子会社・取引先が窮境に陥り、事業再生を行うことになった場合の留意点をまとめていただいた。


資金をめぐる政府支援策の活用とその後の対応策

この章のエッセンス
●新型コロナウイルスの蔓延期、終息期、回復期の各段階において先を見越して打ち手を検討していく必要がある。

●とりわけ資金の確保・資金繰りの見通しが第一であり、そのために利用できる政府の施策は最大限利用すべきであり、常に最悪のリスクシナリオを想定した備えが必要である。

バランスシートへの 影響

 今回の新型コロナウイルス感染症による企業活動への影響は、移動の制限、人と人との接触が抑えられることからインバウンド需要の急減、個人・法人ともに消費需要の低迷を招き、需要減→固定費支出を賄うための借入れ増→利益・キャッシュ・フローの低下→バランスシートの悪化という負のサイクルが形成されている。

 バランスシートは、フローとしての利益の悪化とストックとしての保有資産の減損を通じて純資産の悪化と借入金の増加といった形で顕在化していくことになる(図表1参照)。特に海外のM&Aにより巨額ののれんが計上されている企業については潜在的にのれんの減損リスクを抱えており、今回の件で顕在化することも予想される。

(図表1) バランスシートの悪化イメージ

終息を見越した シナリオの検討

 感染の終息時期が見通せないなか、仮に蔓延期、終息期、回復期の3段階に分けた場合にそれぞれの段階で検討すべきポイントがある(図表2参照)。いつか終息時期は訪れるため、今の段階から先行きを見通した打ち手を検討しておくことが肝要である。

(図表2) 新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じた主な検討項目

 特にシナリオは常に複数持ったうえで常に最悪の状態を想定して検討しておくことが危機対応上も重要であることはいうまでもない。社内にクロスファンクショナルチームを組成し、各部署、各拠点、グループ会社、取引先など社内外のあらゆる先から情報を入手、分析し、資金繰りの見通しを常にアップデートしていくことが望ましい。

 特に第一段階の蔓延期においては何といっても必要な資金の手元確保が最優先事項である。売上の減少がいつまで続くのか、いつからどの程度回復するのかによって資金繰り予測は大きく変わってくる。そのため、合理的な前提を置いてパラメータを設定したシミュレーションが重要となる。シミュレーション上は常にボトムシナリオを作成し、ストレス耐性を測っておくことが肝要である。


 記事全文(第1章のみ)はこちらをご覧ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました